インクルーシブ教育への理解

誰もがありのままの自分を好きで、そのままの自分でいられる社会をつくるために、私達は多様な発想ができる大人を増やしていきたいと思っています。

 

私達には様々な違いがあります。そんな誰もが違うということを前提とした教育がインクルーシブ教育です。その一人一人の違いを互いに認め合っていく中で、次第に互いの違いが気にもならない社会へと変化していけるよう私達は活動しています。

インクルーシブ教育はすべての子ども達に関わることですから、誰もが安心して自分を好きでいられる共生社会をつくるための教育とも言えます。

 

その過渡期にある日本で今、まず私達ができることは、一人ひとりの子ども達の声に耳を澄ますことです。すべての子ども達がそのままの自分でいられる心地よい学校をつくっていくために、子ども達一人ひとりを大切にし、一人ひとりに寄り添い、一人ひとりに関心を寄せることを大切にしていきたいと思っています。そのため現段階では今の教室での合理的配慮や特別支援教育はなくてはならないものとなります。

 

通常学級にはLGBTQ、外国籍、片親、ヤングケアラー、養子、遺児家庭、肢体不自由、気管切開、貧困、場面緘黙、吃音、感覚過敏、感覚鈍麻、ASD、ADHD、LD、Dyslexia、Dyspraxia、Dyscalculia、脳性麻痺など様々な子ども達がいます。一人ひとりを大切にした多様な発想のある教育をすすめていくために今私達にできる第一歩として、通常学級にいる見て分かりにくい困難さを持つ子ども達への理解やサポート方法を広くお伝えしています。

 

まずは大なり小なり誰もが持っている発達障害の特性について詳しく見ていきましょう。

ASD(自閉スペクトラム症)とは

脳機能の特徴から、相手の顔の表情や気持ち、周りの空気をうまく読み取ることに困難さがあります。また、感覚過敏や鈍麻があるため、刺激が多すぎる人混みの中などに長時間いると次の日、寝込むほど疲れてしまう人もいます。一方、感覚鈍麻がある人は、自身の感覚に刺激を入れて安定させようと身体が欲しているため、強い刺激を求めることがあります。例えば、ASDの子どもは高い所に上がったり、高い所から飛び降りたり、くるくる回ることが多々あります。彼らは自身の身体や脳が欲している行動をしているため、それを周りがやめさせようとすることで、不具合を起こすようになります。

 

高い所に登りたい子どもがいれば、それをやめさせるのではなく、安全確保できる場所で存分に高い所に登らせてやって頂ければと思います。そうしているうちに、彼らは自分の欲する刺激を得ながら、彼らなりの発達の道筋で成長していきます。発達の仕方はみんな違っていて、正しい発達の仕方というものはありませんので、どうか、彼らに平均的な発達を求めないでください。彼らの興味関心への追及力を活かしてやって頂ければと思います。

 

詳しくは日本自閉症協会のHPを読んでみてください。大人になったASDの方が幼少期の苦しみや今もなお続く困難さ等についてブログに書いていらっしゃいますので、発達障害ブログランキング等でいろいろ読んでみられるといいと思います。

ADHD(注意欠如・多動症)とは

脳機能の特徴から、幼少時はよく動きます。一方、あまり動かなく大人しくしていて「ぼーっ」としている子どももいます。よく動く子どもは叱られ続けて育ちますから自己肯定感が下がり、思春期あたりから二次障害の反抗挑戦性障害になることが多いようです。「ぼーっ」と大人しくしている子どもの場合はADHDに気づかれにくく、大人になってから困ることが多くなるようです。

 

忘れ物が多い、物をなくしやすい、気が散りやすい、集中力が続かない、片付けられない、興味あるものに集中しすぎて切り替えが難しい、落ち着きがない、衝動性が抑えられず些細なことでもすぐに怒る・順番が守れない・ルールが守れない・約束が守れない等の特徴があります。

 

よく学校などで席につけない子どもを無理矢理、座らせようと躍起になっている教師を見かけますが、彼らは身体を動かして自身の脳を発達させようとしているわけですから、身体を動かしてもいい授業づくりを工夫して頂けると助かります。例えば、跳びながら音読をしてもいい、剣玉をしながら授業を聞くなどの工夫があると落ち着く子もいます。カナダではペダル付机に座って、ペダルをこぎながら授業を受けている子どももいます。オーストラリアではバランスボールを椅子の代わりにしている子どももいます。それぞれの子どもの身体が欲しているものを与えてやりながら教育していくことが必要です。

 

大人達が「こうでなければならない」とADHDの子ども達を抑えつけると彼らのキラッと光る部分が消えてしまいます。どうか、彼らの行動力と発想力に目を向けてやってください。ADHDをもつ人が成功を収める「8つのワケ」ADHDを障害や病気と診断せず、才能へと導く方法を米の心理学者が発表を読んで、良いところに目を向けていきましょう。

 

小児精神科のセラピストMarilyn Wedge博士の記事「なぜ、フランスの子供はADHD発症率が圧倒的に低いのか」や、製薬会社日本イーライリリーが制作したマンガで分かるADHD「ブラックジャックによろしく」も参考になると思います。

LD(学習症)とは

単純な計算なのにどうしてもできないけれど、複雑な問題は解けるとか、読み書きがどうやってもうまくいかない子ども達がいます。

 

一般の人達から見るととても簡単な計算であっても、脳機能の働き方からどうしても計算できないのです。計算できたとしても、とても時間がかかります。6+5=11と誰でも答えられるとは思わないでください。彼らには恐ろしく難しい問題なのです。(計算障害)

 

また、本を読もうとすると、文字が泳いで見えたり、文字がひっくり返って見える、文字が歪んで見える子どももいます。そのため、どうやっても本を読むことができず、周りから怠けているふざけていると思われている子ども達がいます。

 

文字を書こうとすると、思い出せない、書いたとしても読める字が書けない等の症状もあります。こちらもふざけていたり怠けているわけではなく、脳機能の不具合からうまく書くことができないのです。(ディスレクシア)

 

こういった子ども達には計算機を持たせる、板書をする代わりにipadなどで黒板を写真撮影する、ビームなどの音声機器を使うことで彼らの学びたい気持ちをサポートすることができます。

 

大人になったLDの人達が小学生の頃「繰り返し音読の練習をさせられたり、何百回も書かされたことは虐待に等しかった」と言っています。こういった繰り返し練習させられることによって、子ども達は自己肯定感を下げていき、心身症などにかかり不登校になることが多いようです。

 

どうか、LDのある子ども達には支援機器などを使わせてやってください。近視の子ども達がメガネをかけるように、LDの子ども達が教室で支援機器を使える当たり前の世の中にしていきましょう。

 

全国LD親の会や、ディスレクシアの普及活動をしているエッジのHPを見て、正しく理解しましょう。ブログ「成人ディスレクシアtoraの独り言」はディスレクシアの子どもの心がよく分かります。

二次障害(生まれた時にはなかった障害)

幼少時に発達障害があることに周りも本人も気づかないまま育つと、二次障害となることが多いようです。特に障害特性を叱られ続けて育った子どもは、小学校に上がる前ぐらいから小児性うつ病になっている子どももいます。思春期あたりからは反抗挑戦性障害などになっており、親や教師に反抗するようになります。ひどくなると暴れたり、暴言を吐いたり、物を壊したり、他害・自傷なども出てきます。

 

ずっと叱られて育ってきていますから、人から褒められても信じることができず「何か裏があるんじゃないか?」と疑うようになることもあります。また、何を言われても素直に受け取ることができなくなってしまっているので、物事や人に対して否定的な受け取り方をするようになり喧嘩やトラブルが多くなります。

 

※発達障害があると気づいていなくても、その子の特性を周りの大人達がよく理解してあたたかく育てられた場合は、二次障害になることはあまりないようです。つまり、家庭と学校で、障害特性をよく理解して、適切なサポートをしながら、彼らを育てることはとても大切だということです。

 

詳しくは、発達障害の強み・特性を活かした就労支援KaienのHPを読んでみられるといいでしょう。

簡易テスト

誰もが何らかの見えにくい困難さを持っているものです。自己理解をすすめるためにネット上に無料の簡易テストや解説等がありますのでセルフチェックをしてみられるとよいかもしれません。結果はあくまでも目安です。正しい診断は病院で行うようにしてください。一部紹介します。

参考図書

初めて発達障害という言葉に出会った方、発達障害という言葉をよく聞くけれど今一つよく分からないという方、対応方法が分からなくて困っている方、子どもへはどのように伝えれば良いのか等、参考になる図書を紹介しています。