違いのある子どもたちと、ともに生きるために

誰もが、ありのままの自分を大切にされながら学べる社会を、私たちは目指しています。

そのためには、子どもたち一人ひとりの違いを理解し、多様な視点で関わることのできる大人が増えていくことが大切です。

 

インクルーシブ教育とは、障害のある子どももない子どもも、ともに学び、ともに育つことを大切にする考え方です。同じ場所にいることだけを目指すのではなく、一人ひとりの違いや困りごとに寄り添いながら、誰もが安心して学べる環境をつくっていくことが求められています。

教室には、さまざまな背景や特性をもつ子どもたちがいます。だからこそ、一人ひとりへの理解が大切になります。 家庭の状況、ことばや文化の違い、身体の状態、感覚の違い、学び方の違い——それは、本当に一人ひとり異なります。

また、見た目では分かりにくくても、読み書きや計算、人とのやりとり、音や光への感じ方などに困りさを抱える子どもたちもいます。 そうした困りごとは、本人の努力が足りないのではなく、その子と環境との間にある「合わなさ」から生まれていることが少なくありません。

このページでは、発達特性や学びにくさについて理解を深めながら、どのような配慮や支えができるのかを一緒に考えていきます。

 

まずは、子どもたちの感じ方や学び方の違いから見ていきましょう。

空気が読めないんじゃない。世界の感じ方が、ちがうんです

脳の働き方の特徴から、相手の表情や気持ち、場の空気を読み取ることが難しいことがあります。また、感覚が過敏な場合は、人混みや騒がしい場所に長時間いると、翌日寝込んでしまうほど疲弊することもあります。

一方、感覚が鈍い場合は、身体が強い刺激を求めます。ASDの子どもが高いところに登ったり、くるくる回ったりするのは、脳と身体が必要としている刺激を自分で補おうとしているからです。それをむやみにやめさせようとすると、かえって子どもが不安定になることがあります。

高いところに登りたい子どもがいたら、やめさせるのではなく、安全な場所で思い切りやらせてあげてください。子どもは自分に必要な刺激を得ながら、その子なりのペースで育っていきます。

 

発達の仕方は一人ひとり違います。「正しい発達」というものはありません。どうか、平均を求めず、その子の興味や探究心を活かしてあげてください。

じっとできないのは、サボりじゃない。脳が動きを求めているんです

脳の働き方の特徴から、幼いころはよく体を動かします。一方、あまり動かずおとなしく「ぼーっ」としている子どももいます。

よく動く子どもは叱られ続けて育つことが多く、自己肯定感が下がりやすくなります。思春期ごろから反抗的な言動が強くなることもあります。おとなしいタイプの子どもはADHDと気づかれにくく、大人になってから困りごとが表面化することが少なくありません。

ADHDのある子どもには、次のような特徴が見られることがあります。忘れ物が多い、物をなくしやすい、気が散りやすい、集中力が続かない、片付けが苦手、好きなことには集中しすぎて切り替えが難しい、落ち着きがない、衝動的に怒ってしまう、順番やルール・約束を守ることが難しいなど。

席に座れない子どもを無理やり座らせようとする場面をよく見かけますが、体を動かすことで脳を発達させようとしているのです。跳びながら音読する、けん玉をしながら話を聞くなど、体を動かしながら学べる工夫があると落ち着く子もいます。カナダではペダル付きの机、オーストラリアではバランスボールを椅子の代わりに使っている学校もあります。

 

「こうでなければならない」と抑えつけると、その子のキラッと光る部分が消えてしまいます。どうか、行動力と発想力の豊かさに目を向けてあげてください。

読めない・書けないのは、怠けているんじゃない。見え方が、ちがうんです

簡単な計算がどうしてもできないのに、複雑な問題は解けることがあります。読み書きがどうやってもうまくいかない子どももいます。これはLD(学習症)と呼ばれる状態で、怠けているのでも、努力が足りないのでもありません。

たとえば「6+5」のような計算でも、脳の働き方によっては非常に難しく感じることがあります。答えが出せたとしても、ものすごく時間がかかることもあります。「これくらい誰でもできる」とは、思わないでください。

本を読もうとすると、文字が泳いで見えたり、ひっくり返って見えたり、歪んで見えたりする子どもがいます。どれだけ頑張っても読めないのに、「怠けている」「ふざけている」と思われてしまうことがあります。

文字を書こうとしても思い出せない、書いても読める字にならないという子どももいます。これもふざけているのではなく、脳の働き方からうまく書けないのです。(ディスレクシア)

こうした子どもたちには、計算機を使わせる、iPadで黒板を撮影する、音声機器を活用するなど、道具の力を借りることで「学びたい気持ち」をしっかり支えることができます。

大人になったLDのある方が「繰り返し音読させられたり、何百回も書かされたことは虐待に等しかった」と振り返ることがあります。そうした経験が積み重なると、自己肯定感が下がり、心身に影響が出て不登校につながることも少なくありません。

 

近視の子どもがメガネをかけるように、LDのある子どもが教室で支援機器を使うことが、当たり前の世の中にしていきましょう。

叱られ続けた先に、何が起きるか。知っておいてほしいことがあります

幼いころから発達特性があることに、本人も周りも気づかないまま育つと、二次的な困りごとが生まれやすくなります。

特に、特性からくる行動を叱られ続けた子どもは、小学校に上がるころには自己肯定感がひどく傷ついていることがあります。思春期になると親や教師への反抗が強くなり、暴言や物を壊すなどの行動が出てくることもあります。

ずっと叱られて育ってきたため、褒められても素直に受け取れず「何か裏があるんじゃないか」と疑ってしまうこともあります。物事をつい否定的に受け取ってしまい、トラブルが増えることもあります。

でも、知っておいてほしいことがあります。

発達特性に気づいていなくても、その子のことをよく理解して、あたたかく関わり続けた場合、こうした二次的な困りごとはあまり起きないのです。

 

家庭でも学校でも、その子の特性を理解して寄り添うこと。それが、その子の未来を大きく変えます。


この子たちのそばに、理解できる大人がいたら。